【C12-②】 錐 山 → 海別岳の肩・1931  

踏査報告書

踏査地図
 

平成23年 4月15日(金)~4月19日(火)
リーダー   :L伊藤正博・栗原明(網走山岳会)
サポーター:水野明子(網走山岳会)
天候:晴れ~曇り~強風
4月15日 6:50ホロカクンベツ林道出発 9:40錐山到着 13:35C570C1到着
4月16日 5:45C1出発 10:25・875P到着 12:20C1067C2到着
4月17日 強風のためC2で停滞 C3
4月18日 12:50C3出発 13:45・1193P到着 強風のためエスケープルートへ撤退
      16:10オオナイ川C400C4到着
4月19日 4:45C4出発 9:00東6線△214.5下へ到着
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 根北峠~錐山~海別岳の分水嶺は北見・網走・斜里・羅臼の各山岳会でもまだ未踏破のルートと思われ、私の場合、錐山~海別岳の間をトレースすると根北峠から知床岬まで繋がるので、何年も前からチャンスを待っていた。
 15日朝、ホロカクンベツ林道入口まで山仲間に送ってもらう。スノーシューを着け、仲間に見送られ二人で林道を出発。堅雪で歩きやすく15分で林道の二股に着く。林道を左に入ってすぐに尾根に取り付き、急斜面を登って尾根に上がる。天気も良く標津山地の山々や斜里岳の雄姿、遠くに錐山が見える。尾根上の439、505、604のピークを経て錐山に至る。ハイマツの露出した錐山の肩まで登って分水嶺と出合う。頂上付近は風が強く、足をふんばりながら頂上に立つ。これから先は私にとって未知の世界であり、胸をわくわくさせながら歩みを進める。662からの稜線はハイマツが露出している。スノーシューを履いたままハイマツと格闘しながら720Pに登る。720Pから振り返り見る三角錐の錐山の姿が良い。760、690のピークをアップダウンの繰り返しで通過し、C1予定地に向う。690からコルに下がり、550コルから少し上がった570にトド松の林がある。ここまでの稜線も、これから先の稜線も狭く、テントを張るのはここしかないと判断し松林の中にテントを張る。夜中、稜線は風の音が聞こえていたがテント場は無風状態で快適だった。
 16日 曇りの中C1を出発。すぐに756への急登が始まり重荷が肩にくい込む。756のピークから雲間に斜里岳と目指す海別岳が遠くに見える。756から出発するとガスが発生して景色が見えなくなる。昨日はスタートしてから、尾根上に連続する小ピークのアップダウンの繰り返しだったが、ここから先も小さなピークが連なる。支尾根に入り込まないよう常に地形図を見ながら歩みを進める。707を過ぎるとガスが晴れて展望が広がる。北方向には目指す海別岳が大きく見える。分水嶺は760Pから90度東に折れるのでコンパスで確かめる。760Pから590最低コルに下がるにつれて、再びガスが発生し周囲の景色は見えなくなる。最低コルから870への標高差280mの急斜面を黙々と足元だけを見つめ喘ぎながら登る。870から875への稜線もガスの中で、500mの距離がとても長く感じられる。875から先の稜線はハイマツの露出が多くなり、スノーシューを履いたままハイマツと格闘するが、ストックが枝に絡まって難儀する。風が強くなり、頭に被っていたバンダナが風に吹かれて谷の方へ飛んで行った。頭が寒いので冬用の帽子を出して被る。1082手前の尾根に差し掛かると分水嶺はハイマツが露出しているので、ハイマツのすぐ下の雪の急斜面をトラバースして進む。1082ピークの直下はすごい風で、ストックでバランスをとりながら慎重に通過する。1082を過ぎたコルにダケカンバの小さな林があるので、ここをテント場に決める。コルは風が全く無いが、海別岳の肩1193から上は雲に覆われて風も強そうだ。時間はまだ12:20だが、この先に木の生えた所は無く、広いハイマツ帯の吹きさらしになるのでテントを張る場所は無いと思われる。テントを張り終えると、北東の方向にラサウヌプリが見える。とても暖かく、テントの入口を開けたまま夕方まで無線交信をしたり、天気予報を聞いたりしてくつろぐ。夜7時頃に就寝すると、1082ピークの方で風の音が聞こえるがテント場は無風で静かな夜である。夜8時になると突然雨が土砂降りになり、10時にぴたっと止む。前線が通過したらしい。外に出てみると星が出て、海別岳の肩もはっきり見えている。斜里の街の灯の夜景が美しい。「明日は予定通り海別岳のピークはいただきだね」と言いながら再びシュラフに入る。夜11時になると突然ゴーッと強い風が吹き始める。この強風が36時間続くことになるとは。風の凄まじい音で眠ることができない。風速は30m位だろうか。ただただシュラフの中で風が止むのを耐えるしかない。
 17日 終日停滞。 
 18日朝9時頃になって少し風が弱まってきたが、時折まだ強い風が吹く。昼になって弱い風の時間が続くようになり出発することにする。周囲の景色が見えない中、1193を過ぎて1200m辺りに差し掛かると、突然北からの強い向かい風が吹き、歩くのが困難になって中止を決める。予め計画書に載せてあったエスケープルートの奥蘂別川に下降する。沢に少し下がると風が全く無い。午後4:10、標高400mの川畔林にC4とする。無風で極楽だった。
 翌19日、奥蘂林道に出て下山となる。
(文・写真 伊藤正博)

①錐山の手前から肩と頂上


②662から錐山を振り返る


③C570コルから760を振り返る


④707から海別岳方向を望む


⑤1082から海別肩1193・1276