クマ撃退スプレーに国内規格認証を

④ ヒグマ
アマゾンで検索すると多種多様な「クマ撃退スプレー」が出てくる。

2025.12.1

 2025年は、北海道のヒグマに加え本州のツキノワグマの出没件数、人的被害がかつてないレベルまで増えて、9月には鳥獣保護管理法が改正され市町村長の判断で猟銃で捕獲できる緊急銃猟制度がスタート、11月には公安委員会規則が改正され警察官がライフル銃で捕獲できるようになった。ただ、登山や渓流釣り、山菜取りなどで山林に入る一般人にとっては、現実的な対処方法の最終手段はクマ撃退スプレーになる。そんな事情を背景に各種製品が注目を集め、通販・ネット販売主体にかつてない売れ行きになる中、製品の性能に関して問題が浮かび上がる。

 朝日新聞12月1日付け紙面「クマ撃退スプレー 性能や使い方に注意」の記事では、「クマよけ」などの名目で販売されている製品でありながら明らかにクマには効果がなかったり、対人用の催涙スプレーも混じっていて、ヒグマ学習センター・前田菜穂子代表の「消費者に適切な情報が届いていない」というコメントも掲載されていた。

朝日新聞12月1日付け朝刊紙面

 同じような指摘は、本投稿欄9月27日でも取り上げた弟子屈町でネイチャーロッジを経営している橘利器氏によるユーチューブ動画「クマスプレーの闇」(国内流通6製品の比較実験)でも出されている。特に通販・ネット販売で製品を選ぶ場合は、製品の性能・効果をよく吟味する必要があるということかもしれない。決して安価と言えない製品だけに考えさせられる。

 クマ撃退スプレーに関しては、米国では環境保護庁EPA、カナダでは保健省Health Canadaが、販売前に性能を審査して合格したものだけに「認証」を与えて販売を許可している。ただ日本ではスプレーの規格や性能を審査する公的な制度がなく、現実的に相当数の不良な製品、クマに効かない可能性も否定できない製品が流通しているのが現状なのだろうか。

 国としてクマ対策に本腰を上げるならば、国内でもクマ撃退スプレーの製品規格を審査、点検し、認証する公的な仕組みを早急に整備していくことも望まれる。銃による駆除強化ばかりがクマ対策ではないように思えてならない。