カミフエリア連続雪崩事故現場をめぐる誤発表、誤報

■ニュース■
三段山山頂の南側真下の積雪面が切れているのが良く分かる=3月11日撮影、三段山クラブ・大西人史代表のFacebookから了解を得て転載

2026.3.12

 十勝岳連峰の上富良野町周辺の山岳エリアは、「カミフの山」とか「カミフエリア」と呼ばれてきた。具体的には十勝岳(2077㍍)、前十勝(1790㍍)、三段山(1748㍍)、上ホロカメットク山(1920㍍)、上富良野岳(1893㍍)、三峰山(1866㍍)、富良野岳(1912㍍)など、上富良野町の吹上温泉(白銀荘)や十勝岳温泉(凌雲閣)を登山起点とした山々のことで、一つの山ではなく、広いエリアを指している。

 このカミフエリアで3月5日に台湾人男性が、3月10日にカナダ人男性が表層雪崩に埋没し、コンパニオンレスキューなど雪崩トランシーバーを使って同行者に掘り起こされ、現時点では一命を取り留めているようだが、生死に関してはかなり厳しい状況だったと推測される。この2つの雪崩現場を新聞、テレビ、通信社、そのニュースを2次利用したネットニュースも「上富良野岳」として報道しているが、3月5日の現場は上富良野岳を水源の一つにした(さん)峰山(ぽうざん)沢左股中流域、3月10日の現場は三段山山頂直下だ。報道機関の中には、3月10日のヘリの現場映像だとして三段山の現場とかけ離れた場所(上富良野岳の沢筋)を3月11日の放送で流して、関係のない沢斜面の自然発生雪崩を当該の「雪崩の跡」かの如く報道しているところも見受けられ、不正確な情報提示に留まらず、誤った情報が堂々と流布している。

 3月5日の現場は上富良野岳の沢斜面(山頂からは直線距離で1.6㌔離れている)と言えなくはないが、特に3月10日の現場は上富良野岳とは上ホロカメットク山やヌッカクシフラヌイ川を挟んだ対岸の三段山山頂直下であり、「現場が上富良野岳」というのは明らかに誤報である。

3月5日の雪崩現場(三峰沢沿いの赤丸部分の2つ)と男性埋没=救出地点(赤✖部分)と、3月10日の雪崩現場(三段山の山頂直下の赤丸部分)=明らかに上富良野岳ではない。

 なぜ、このような誤報が起きたのか?

 道警が2つの雪崩現場とも「上富良野岳」と発表し、メディアが地形図で現場を確認しないまま大本営発表のごとく鵜呑みにして報じているからに他ならない。2件の雪崩とも、北海道警察山岳救助隊が厳しい気象条件下で苦労して現場に出向いて、要救助者を搬送しているのに、正確な位置情報を含む現場報告がきちんと報道発表に反映されない不可思議さも感じる。報道側の確認作業もどうだったのかと考えてしまう。

 この二つの表層雪崩は、日本雪氷学会北海道支部「雪氷災害調査チーム」の大西人史さんらによって現場調査が行われ、3月5日の雪崩については速報が8日に発表済みで、3月10日の雪崩は明日13日に道庁記者クラブとホームページで速報が発表予定だ。

 2つの表層雪崩はともに、降った雪が日照や温度変化などによってできた「弱層」(霜系弱層)が形成され、その上に降り積もった積雪(上載積雪)が登山者の荷重がきっかけ(トリガー)となって大量に滑り落ちたと考えられる。2つの現場に出向いて一帯を広く歩いた大西さんによると、体重をかけると積雪内部で不安定な弱層の存在を示すワッフ音があちこちで鳴り、斜面方位にもあまり関係なく、極めて不安定な積雪状態になっていて、ほぼ同じ気象条件(降雪、積雪、日照、気温、風など)のカミフエリア全体で、表層雪崩がどこで起きてもおかしくない状況とみられる。それぐらい現在のカミフエリアでは近年稀にみる表層雪崩が起きやすい状態になっているという。

 表層雪崩を引き起こす霜系弱層は長期間維持されることがこれまでの研究で分かっており、日本雪氷学会北海道支部は警鐘を鳴らしている。

 同じような雪崩による人的被害をさらに起こさないためにも、現場がどこなのか、斜面の方位はどうなのかなどということは、雪崩に安易に遭遇しないためにも極めて重要な情報だ。道警にはその重要な位置情報を正確に発表し、報道機関はきちんと確認して正確な報道をすべき責務を全うしてもらいたい。

3月10日の三段山山頂直下で起きた雪崩現場の調査に向かう日本雪氷学会北海道支部「雪氷災害調査チーム」の皆さん(左端が大西人史さん)=3月11日、十勝岳温泉「凌雲閣」前<大西さんのFacebookから転載>