お知らせ&ニュース、リポート

  • 雌阿寒岳登山規制

     札幌管区気象台の「噴火警報」発表で雌阿寒岳の噴火警戒レベルが「1(活火山であることに留意)」から「2(火口周辺規制)」に引き上げられたことをうけて、山域を抱える釧路市は9月15日午後3時20分、6合目からポンマチネシリ火口までの範囲の立ち入りを規制を発表し、登山道も規制対象となった。

     気象台は、ポンマチネシリ火口から約500mの範囲では、噴火に伴い弾道を描いて飛散する大きな噴石が飛ぶ可能性があり、風下側では火山灰や小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあると警戒を呼び掛けている。

     16日には同火口内とその周辺に火山灰の堆積を確認、噴火の可能性も懸念される。

     雌阿寒岳が噴火警戒レベル「2」になるのは、2018年12月以来7年ぶりだ。

  • 第31回北海道雪崩講習会(2025-2026シーズン)

     当支部も協賛などで関わる「第31回北海道雪崩講習会」の受講者募集がスタート。実地講習は、道央校、道東校、道北校に分かれ、基本・中級・上級実践の3区分での募集。総合理論講座のみの「聴講生」も募集。①11月30日(日)9時~17時、札幌・りんゆうホールで総合理論講座、②来年1月14日(水)にオンラインで実地講習前ミーティング&座学、③実地講習が1月24日(土)~25日(日)に道央校(実地講習:中山峠周辺)、1月31日(土)~2月1日(日)に道東校(同:日勝峠周辺)、2月7日(土)~8日(日)に道北校(同:グリーンぴっぷ周辺)。基本・中級・上級実践、聴講生は受講料が異なり、申し込み方法などは、フライヤーで確認願います。11月7日締め切り。フライヤーをアップします。申し込みフォームのURLは以下の通り。

    https://forms.gle/E15aRqcVXSsavZMf7

  • 雌阿寒岳で火山性微動

     阿寒湖畔の「日本百名山」雌阿寒岳(1499㍍)で9月12日午後2時40分ごろから約7分間、火山性微動を観測したとして、札幌管区気象台が発表、火山ガスや火山灰の噴出に注意するよう呼び掛けている。噴火警戒レベルは「1」(1~5の5段階評価の最低レベルの警戒喚起)。

     雌阿寒岳での火山性微動観測は2024年11月6日以来になる。火山性地震も増加しており、11日午後3時~12日午後4時にかけて83回を数えている。

    ※北海道新聞朝刊(9月13日付け朝刊記事を元に構成)

    札幌管区気象台は9月15日、雌阿寒岳の噴火警戒レベルを、火口周辺への立ち入りを規制する2に引き上げた。

    今後、ポンマチネシリ火口から半径500メートル以内に影響を及ぼす噴火の可能性が指摘されている。

    以下は気象庁の発表資料から転載(9月12日の山頂周辺の噴煙の様子)

  • 羅臼岳ヒグマ襲撃事故、知床ヒグマ対策連絡会議が会見、資料を公開 

     羅臼岳ヒグマ襲撃死亡事故(2025年8月14日発生)に関し、知床財団を含む知床ヒグマ対策連絡会議が9月11日に会見し、「事故の概要」を公表した。

     8月21日と9月1日に知床財団が発表した調査速報で不明確だった部分に関して加筆すべき記載情報を詳述する。

     この日の会見では、「再発防止策」がまとまるまで、羅臼岳登山道(岩尾別コースと羅臼コース)は閉鎖が解除されないことも明らかにされた。以下に掲載した画像データはすべて、この会見で配布された公表資料から転載。

    ■事故発生現場

     事故発生は8月14日午前11時ごろ。岩尾別コースの登山口から約1400㍍地点(1時間程度の所要時間)の通称560㍍岩峰付近の幅約110㌢の登山道上で、獣道が横切った地点。

    ■被害者男性の状況(抜粋になるが、引用部は原文のまま)

    ・事故発生時、被害者は単独で走って移動していた可能性が高い。移動速度などは不詳であるが、登山全体の行程から類推してもかなり速いペースで下山していたことは確かである。早いペースを意識し「走れるところは走る」といった行動をしていたが、いわゆる「トレイルランニング」と呼ばれるスタイルを志向した登山ではない。

    ・被害者はクマ鈴は携行していた。クマスプレーは不明である。その後の調査においても所持や使用に関する情報はなく、所持していなかった可能性が高い。

    ■事故発生後の状況(抜粋になるが、引用部は原文のまま)

    ・(被害者の後方約200㍍を歩いて下山中だった)同行者は、被害者の助けを呼ぶ声で事故の発生を知覚し、登山道から外れて林内斜面を下り、ヒグマに襲われている被害者を林内で発見した。この際、同行者が確認したヒグマは1頭との情報である。

    ・同行者は応戦と救助を試みたが、ヒグマは被害者から離れなかったため、携帯電話の通じる登山道上に移動し、警察へ通報を行った(通報時間11:10)。

    ・同行者は強力催涙スプレー(現段階でヒグマに対応したものであったかは不明)を所持していたが、使用履歴が不明のものだった。事故発生時の初期対応において使用を試みたが、噴射できていない。登山開始時にすでに空の状態だった可能性がある。

    襲撃した母グマと子グマは事故前から、再三、人の前に現われ、目撃されていた。

  • 愛山渓温泉の今後は?

     安足間岳や愛別岳など大雪山系の登山口の一つ、上川町・愛山渓温泉「愛山渓倶楽部」(標高1000㍍)の今後に暗雲が立ち込めている。上川町から9年間委託運営を受けて営業してきたりんゆう観光(札幌)が今年10月5日の今季営業最終日をもって委託運営に終止符を打ち、来年以降の運営から手を引くことが愛山渓温泉のホームページで公表された。

     建物や温泉の所有者である上川町によると、来年以降の運営、営業の可否は現時点ではっきりしていないという。登山者にとっても重要な拠点だった、源泉かけ流しの炭酸水素塩泉の山中の秘湯の宿の今後が心配される。

     大雪山系の上川町では今夏、高原沼などの沼巡りや緑(松浦)岳の登山口である高原温泉「大雪高原山荘」(標高1260㍍)が7月、所有者である日本製紙から営業休止が正式に発表され、来年以降の営業再開も危ぶまれている。

     源泉かけ流しで白濁湯の山中の秘湯宿には熱烈なファンが多いこともあるが、愛山渓温泉ともども大雪山系登山の重要な拠点でもあり、除雪や車両通行の前提でもある秘湯温泉宿の相次ぐ営業休止の今後が気になる。

    愛山渓温泉 明治末期に発見され、大正時代後半に温泉宿としてスタート。1936年(昭和11年)に自動車道路約20㌔が完成し、表大雪の登山口の一つと位置付けられて温泉宿は増改築。戦後になって1948年(昭和23年)、旭川林務署が隣接地に山小屋「愛山荘ヒュッテ」を建設。温泉宿は1950年(昭和25年)、愛別村の村営宿泊所「愛山渓クラブ」となり、1980年(昭和55年)に「上川町営愛山渓青少年の家」として、現在の鉄筋コンクリート2階建ての本館が完成。2000年(平成12年)から15年間、国道39号入口の愛山渓ドライブインが「愛山渓倶楽部」の名で委託運営、2017年(平成29年)からりんゆう観光が委託運営に当たってきた。

  • 「雪崩から身を守るために」講演会

    雪崩事故防止研究会が毎年、冬シーズン前に各地で開いている雪崩対策の講演会の今冬(10~12月)の概要が決まった。札幌・北大、鳥取県・大山、栃木県・大田原、東京都・青山学院大、長野県・白馬の5か所で開催する。講演会に関連して、雪崩トランシーバーを使った「雪崩サーチ&レスキュー講習会」が10月26日(日)に札幌・北大、11月16日(日)に鳥取・大山、12月7日(日)に東京・代々木公園、12月17日(水)に福島・ネコママウンテンスキー場、12月20日(土)に群馬・谷川岳ヨッホスキー場などで予定されている。講演会は無料だが、「雪崩サーチ&レスキュー講習会」は有料。詳しくは雪崩事故防止研究会のホームページを参照されたい。https://www.assh1991.net/

    ■札幌会場 第33回講演会

    10月25日(土)10時~18時、北大高等教育推進機構大講堂

    ■鳥取県・大山(だいせん)会場 第2回講演会

    11月15日(土)10時~17時30分、大山総合体育館

    ■栃木県・大田原会場 第8回講演会

    11月29日(土)10時~18時、大田原市ピア-トホール

    ■東京会場 第7回講演会

    11月30日(日)10時~18時、青山学院大

    ■長野県・白馬会場会場 第6回講演会

    12月13日(土)14時~21時、協和ウイング白馬(白馬村)

  • 10.1~、チロロ林道、冬季閉鎖へ

     日高山脈・戸蔦別岳、幌尻岳登山ルートである日高町のチロロ林道ゲートは9月30日で2025年の開錠期間を終えて、車両通行止め期間に入ります。ゲート開放は例年通りならば来年6月の見通し。問い合わせは日高北部森林管理署☎01457-6-3151へ。

  • 大雪山「高原沼めぐり登山コース」今秋は閉鎖

     紅葉名所として9月に例年多くの登山者、観光客で賑わう大雪山系の「高原沼めぐり登山コース」について、高原温泉ヒグマ情報センターは関係機関と協議の上で9月3日、ヒグマとの遭遇リスクが高いと判断して、今月の紅葉時期も含めて閉鎖を発表した。沼巡りコースは閉鎖するが、大雪高原温泉から緑岳登山道は通行できる。

     紅葉目的の入山者対策として9月中下旬に行っている交通規制(マイカー規制、代替のシャトルバス運行)について、上川町は9月8日、高原沼めぐり向けの高原温泉線は行わず、銀泉台線は例年通り運行することを発表した。銀泉台線の交通規制は9月13日(土)~21日(日)で、土日祝日にはシャトルバスを運行し、平日は交互交通規制となる。詳細は上川総合振興局旭川建設管理部☎0166・26・4461へ。

  • 9.1~、パンケヌーシ林道はゲート閉鎖

     チロロ岳などの登山ルートである日高町のパンケヌーシ林道は8月31日をもって、2025年のゲート開錠期間を終えて、9月1日から車両通行止め期間に入っています。例年通りならば、2026年のゲート開放は来年6月の見通し。詳しくは日高北部森林管理署☎01457-6-3151へ。

  • 羅臼岳ヒグマ襲撃死亡事故 知床財団調査速報8.21、9.1

    知床半島最高峰・羅臼岳(1660㍍)の斜里町・岩尾別コースの登山口(岩尾別温泉)に近い登山道で8月14日、下山中の登山客男性(26)が2頭の子連れの母グマに襲われて死亡した事故に関して、知床財団は8月21日と9月1日の2回に分けて、事故の事実関係についての調査速報を発表した。主なポイントは以下の通り。

    • 被害男性は標高560㍍岩峰付近の登山道上で親グマと遭遇し攻撃を受けたとみられる。
    • 現場付近はヒグマの夏場の餌となるアリが恒常的に発生する場所であり、アリ捕食目的のヒグマ出没が多発する場所だった。
    • 被害男性がヒグマに襲われた時、連れの男性は「かなり早いペースで下山していたと推定される」としたが、いわゆる「トレイルランニング」か否かは不明。
    • 連れの男性は後方約200㍍に居て、ほぼ単独でヒグマと遭遇した状況と考えられ、ヒグマ遭遇時の目撃者は誰もいない。
    • 連れの男性が現場付近に到達した時点では、助けを呼ぶ声でヒグマに襲われている被害男性を登山道わきの林内で発見し、応戦と救助を試みたが、ヒグマが被害者から離れなかったため、携帯電話の通じる登山道上に移動して警察に通報を行ったという。
    • 被害男性はクマ鈴は携行していたが、クマスプレーの携行や使用に関する証拠は確認できておらず不明。連れの男性は「クマよけスプレー」と謳った商品は持っていたが、ヒグマに対応した製品ではなかった。事故発生時、被害男性に追いついた初期対応では使用を試みたが、噴射はできていなかったという。
    • 被害男性のヒグマ遭遇地点から西南方向の沢斜面で翌8月15日、捜索救助隊が被害男性を咥えて引きずりながら斜面を移動している親グマとその周囲に2頭の子グマがいるのを発見し、ハンターが3頭とも現場で捕殺した。男性が襲われた場所、移動経路に残された遺留物から採取したヒグマの体毛や唾液と、捕殺した親グマのDNAが一致し、他のクマの関与は認められない。
    • 捕殺した親グマは、11歳のメスで体重117㌔で、体長140㌢、子グマはメス(体重17㌔体長72㌢)1頭とオス(体重17㌔、体長71㌢)1頭。
    • この母グマは、出生年である2014年から毎年のように知床の道路沿線など人目に付く場所で目撃されていた個体で、今夏も8月10日に羅臼岳登山道付近で親子セットで目撃され、「人を避けない、人に出会ってもすぐに逃走しない」個体として、追い払い対応(忌避学習付け)を繰り返し行ってきた経緯があったという。

    現時点のまとめ

    ★2回の速報から読み取れるのは、かなりの速足で下山中の被害男性はほぼ単独に近い状態で登山道上で人慣れした親子グマと偶発的に遭遇して攻撃を受け、死に至ったということであろう。「子グマを連れた人慣れした母グマ」「速足で登山道を下山中に偶発的に遭遇した単独状態の登山者」の2点が浮き彫りになっている。

    ★知床財団によると、知床半島(斜里町・羅臼町・標津町の3町)の推定ヒグマ生息数は、2019年の中央値が472頭(推定幅:393~550頭)、2020年の中央値が399頭(推定幅:342~457頭)として、半島全体で400~500頭と推測している。道内他山域に比べてヒグマ目撃の機会は多いが、ヒグマによる人身事故(死亡事例)は今回が初めて。8月14日以来、羅臼岳の登山ルート(斜里町・岩尾別登山口、羅臼町・羅臼温泉登山口)は入山規制が続いている。