カテゴリー: 動物

  • 羅臼岳ヒグマ襲撃事故、知床ヒグマ対策連絡会議が会見、資料を公開 

     羅臼岳ヒグマ襲撃死亡事故(2025年8月14日発生)に関し、知床財団を含む知床ヒグマ対策連絡会議が9月11日に会見し、「事故の概要」を公表した。

     8月21日と9月1日に知床財団が発表した調査速報で不明確だった部分に関して加筆すべき記載情報を詳述する。

     この日の会見では、「再発防止策」がまとまるまで、羅臼岳登山道(岩尾別コースと羅臼コース)は閉鎖が解除されないことも明らかにされた。以下に掲載した画像データはすべて、この会見で配布された公表資料から転載。

    ■事故発生現場

     事故発生は8月14日午前11時ごろ。岩尾別コースの登山口から約1400㍍地点(1時間程度の所要時間)の通称560㍍岩峰付近の幅約110㌢の登山道上で、獣道が横切った地点。

    ■被害者男性の状況(抜粋になるが、引用部は原文のまま)

    ・事故発生時、被害者は単独で走って移動していた可能性が高い。移動速度などは不詳であるが、登山全体の行程から類推してもかなり速いペースで下山していたことは確かである。早いペースを意識し「走れるところは走る」といった行動をしていたが、いわゆる「トレイルランニング」と呼ばれるスタイルを志向した登山ではない。

    ・被害者はクマ鈴は携行していた。クマスプレーは不明である。その後の調査においても所持や使用に関する情報はなく、所持していなかった可能性が高い。

    ■事故発生後の状況(抜粋になるが、引用部は原文のまま)

    ・(被害者の後方約200㍍を歩いて下山中だった)同行者は、被害者の助けを呼ぶ声で事故の発生を知覚し、登山道から外れて林内斜面を下り、ヒグマに襲われている被害者を林内で発見した。この際、同行者が確認したヒグマは1頭との情報である。

    ・同行者は応戦と救助を試みたが、ヒグマは被害者から離れなかったため、携帯電話の通じる登山道上に移動し、警察へ通報を行った(通報時間11:10)。

    ・同行者は強力催涙スプレー(現段階でヒグマに対応したものであったかは不明)を所持していたが、使用履歴が不明のものだった。事故発生時の初期対応において使用を試みたが、噴射できていない。登山開始時にすでに空の状態だった可能性がある。

    襲撃した母グマと子グマは事故前から、再三、人の前に現われ、目撃されていた。

  • 大雪山「高原沼めぐり登山コース」今秋は閉鎖

     紅葉名所として9月に例年多くの登山者、観光客で賑わう大雪山系の「高原沼めぐり登山コース」について、高原温泉ヒグマ情報センターは関係機関と協議の上で9月3日、ヒグマとの遭遇リスクが高いと判断して、今月の紅葉時期も含めて閉鎖を発表した。沼巡りコースは閉鎖するが、大雪高原温泉から緑岳登山道は通行できる。

     紅葉目的の入山者対策として9月中下旬に行っている交通規制(マイカー規制、代替のシャトルバス運行)について、上川町は9月8日、高原沼めぐり向けの高原温泉線は行わず、銀泉台線は例年通り運行することを発表した。銀泉台線の交通規制は9月13日(土)~21日(日)で、土日祝日にはシャトルバスを運行し、平日は交互交通規制となる。詳細は上川総合振興局旭川建設管理部☎0166・26・4461へ。

  • 羅臼岳ヒグマ襲撃死亡事故 知床財団調査速報8.21、9.1

    羅臼岳ヒグマ襲撃死亡事故 知床財団調査速報8.21、9.1

    知床半島最高峰・羅臼岳(1660㍍)の斜里町・岩尾別コースの登山口(岩尾別温泉)に近い登山道で8月14日、下山中の登山客男性(26)が2頭の子連れの母グマに襲われて死亡した事故に関して、知床財団は8月21日と9月1日の2回に分けて、事故の事実関係についての調査速報を発表した。主なポイントは以下の通り。

    • 被害男性は標高560㍍岩峰付近の登山道上で親グマと遭遇し攻撃を受けたとみられる。
    • 現場付近はヒグマの夏場の餌となるアリが恒常的に発生する場所であり、アリ捕食目的のヒグマ出没が多発する場所だった。
    • 被害男性がヒグマに襲われた時、連れの男性は「かなり早いペースで下山していたと推定される」としたが、いわゆる「トレイルランニング」か否かは不明。
    • 連れの男性は後方約200㍍に居て、ほぼ単独でヒグマと遭遇した状況と考えられ、ヒグマ遭遇時の目撃者は誰もいない。
    • 連れの男性が現場付近に到達した時点では、助けを呼ぶ声でヒグマに襲われている被害男性を登山道わきの林内で発見し、応戦と救助を試みたが、ヒグマが被害者から離れなかったため、携帯電話の通じる登山道上に移動して警察に通報を行ったという。
    • 被害男性はクマ鈴は携行していたが、クマスプレーの携行や使用に関する証拠は確認できておらず不明。連れの男性は「クマよけスプレー」と謳った商品は持っていたが、ヒグマに対応した製品ではなかった。事故発生時、被害男性に追いついた初期対応では使用を試みたが、噴射はできていなかったという。
    • 被害男性のヒグマ遭遇地点から西南方向の沢斜面で翌8月15日、捜索救助隊が被害男性を咥えて引きずりながら斜面を移動している親グマとその周囲に2頭の子グマがいるのを発見し、ハンターが3頭とも現場で捕殺した。男性が襲われた場所、移動経路に残された遺留物から採取したヒグマの体毛や唾液と、捕殺した親グマのDNAが一致し、他のクマの関与は認められない。
    • 捕殺した親グマは、11歳のメスで体重117㌔で、体長140㌢、子グマはメス(体重17㌔体長72㌢)1頭とオス(体重17㌔、体長71㌢)1頭。
    • この母グマは、出生年である2014年から毎年のように知床の道路沿線など人目に付く場所で目撃されていた個体で、今夏も8月10日に羅臼岳登山道付近で親子セットで目撃され、「人を避けない、人に出会ってもすぐに逃走しない」個体として、追い払い対応(忌避学習付け)を繰り返し行ってきた経緯があったという。

    現時点のまとめ

    ★2回の速報から読み取れるのは、かなりの速足で下山中の被害男性はほぼ単独に近い状態で登山道上で人慣れした親子グマと偶発的に遭遇して攻撃を受け、死に至ったということであろう。「子グマを連れた人慣れした母グマ」「速足で登山道を下山中に偶発的に遭遇した単独状態の登山者」の2点が浮き彫りになっている。

    ★知床財団によると、知床半島(斜里町・羅臼町・標津町の3町)の推定ヒグマ生息数は、2019年の中央値が472頭(推定幅:393~550頭)、2020年の中央値が399頭(推定幅:342~457頭)として、半島全体で400~500頭と推測している。道内他山域に比べてヒグマ目撃の機会は多いが、ヒグマによる人身事故(死亡事例)は今回が初めて。8月14日以来、羅臼岳の登山ルート(斜里町・岩尾別登山口、羅臼町・羅臼温泉登山口)は入山規制が続いている。